心不全の定義
心不全は複雑な進行性の臨床症状を呈し、心臓のポンプ機能不全で体が必要とする血液量を十分に供給できません。
心不全は進行性の(慢性期)症状で、突然に機能不全(急性)を伴います。慢性心不全の進行が速い場合、迅速かつ正確な診断が欠かせません。診断の遅延や過誤は適切な治療の開始を遅らせ、罹患率・致死率の上昇と治療費の高騰につながります[4]。
Disease progression. Clinical course of heart failure. Greenhalgh et al. BMC Cardiovascular Disorders (2017) 17:156
心不全の診断
心不全の診断は経験が必要です。まずは、身体所見と患者の病歴が基本です。
さらなる心不全診断(確認または除外)の手段として、心電図・胸部X線撮影・心エコー・NT-proBNPのような心不全バイオマーカー検査が有効であると認められています。
急性症状ではない場合:
2016年のESCガイドラインでは、心エコーが迅速に利用できない場合には、血漿中のナトリウム利尿ペプチドの濃度を初診時の臨床検査として使用することを推奨しています: NT-proBNP < 125 pg/ml = 心不全の可能性低い
急性症状の場合:
同様の考え方ですが、カットオフ値は高めになります: NT-proBNP < 300 pg/mL = 心不全の可能性低い
このガイドラインでは、急性呼吸困難症や急性心不全を疑う救急部/CCU/ICU患者について、NT-proBNPを測定し、急性心不全を非心臓由来の急性呼吸困難と鑑別することを推奨しています[5]。
Adapted from 2016 ESC guidelines. ESC guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J doi:10.1093/eurheartj/ehw128
心不全のバイオマーカー
すでに述べているように、ナトリウム利尿ペプチド(BNPまたはNT-proBNP)は、米国循環器学会(ACC)・米国心臓学会(AHA)・米国心不全学会(HFSC)・ヨーロッパ循環器学会(ESC)の心不全の診療ガイドラインおよび日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドラインに記載されています[5-6]。
NT-proBNPのようなナトリウム利尿ペプチドの迅速検査と臨床所見の組み合わせにより、救急部での急性呼吸困難の評価・診断の効率、トリアージが向上し、退院までの期間が短縮され、治療コストを削減します[7]。
ナトリウム利尿ペプチドの他の利用法:
- NT-proBNPは急性冠症候群(ACS)患者の重症度と予後予測に有用[8]
- カナダのガイドラインでは、予後予測バイオマーカーとして、再入院または死亡の予測として、心不全患者が退院する前にBNPまたはNT-proBNPを測定することを推奨[9]
- NT-proBNPが大きく下降する患者は、心臓死または心不全による入院の確率が低い[10]
- ARNiの投与を受けている患者の心不全重症度のマーカーとして、NT-proBNPが利用できる可能性あり[11]
- ナトリウム利尿ペプチドの連続測定は心不全治療の期間と積極性の指標となる[12]
ナトリウム利尿ペプチドとトロポニンの他にも、炎症・酸化ストレス・神経ホルモン活性化・組織リモデリングのマーカーなどが心不全の予後予測マーカーとして評価されています。
感染症の併発が疑われる急性心不全患者については、プロカルシトニン濃度の測定が肺炎との鑑別診断と抗生物質治療の指標となります[3]。
心臓由来バイオマーカーNT-proBNPの心不全診断における使い方について詳しく知る。
参考文献
1. Ambrosy PA et al., JACC Vol. 63, no 12, 2014:1123–1133
2. Savarese G., Lund LH, Cardiac Failure Review 2017;3(1):7–11
3. Anh L. Bui, Tamara B. Horwich, and Gregg C. Fonarow, Epidemiology and risk profile of heart failure
4. What is heart failure - http://www.heart.org/HEARTORG/Conditions/HeartFailure/AboutHeartFailure/What-is-Heart-Failure_UCM_002044_Article.jsp
5. Eur J Heart Fail. 2016 Aug; 18(8):891-975
6. JACC Vol. 70, no 6, 2017:776-803
7. Moe GM et al. Circulation. 2007; 115:3103-3110
8. Radwan H., Selem A., Ghazal K. Value of N-terminal pro brain natriuretic peptide in predicting prognosis and severity of coronary artery disease in acute coronary syndrome. J Saudi Heart Assoc. 2014;26(4):192–198.
9. Canadian Journal of Cardiology 2015; 31: 3-16
10. Zile MR et al., JACC Vol. 68, no 22, 2016: 2425-36
11. McKie PM et al., JACC Vol. 68, no 22, 2016: 2437-39
12. Januzzi JL, Troughton R , Circulation 2013 Jan 29;127(4):500-7.
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