非侵襲的換気中の患者を管理するための経皮モニタリング
過去10年間、非侵襲的換気(NIV)は、集中治療室(ICU)と呼吸器高度治療室(RHDU)の両方における急性呼吸不全治療の基盤であることが証明されています[1]。
いくつかの研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)憎悪、急性呼吸不全、および最近では新型コロナウイルスにおける低酸素血症性急性呼吸不全の管理におけるNIVの有用性が示されています[1, 2]。
NIV中は、治療効果を観察しその調整を行うために、血液中のCO2レベルをモニタリングすることが重要です。CO2モニタリングのゴールドスタンダードは、その正確性と精度から動脈血液ガスと言われています。しかし、動脈穿刺プロセスは患者にとって痛みを伴う可能性があり、また血液ガス値は単一ポイントしか示しません[3]。
対照的に、CO2の経皮モニタリング(TCM)は連続的な値を示し、非侵襲的で患者の痛みを軽減し、より予防的な換気管理が可能になります[1]。以上より、経皮モニタリングは動脈血液ガスを補完することができ、特定の場合では代替とすることも可能です。
救急診療部での急性呼吸不全におけるTCM
急性呼吸不全(ARF)は、救急部(ED)でよく見られます。ARFを伴う患者の管理とモニタリングは、EDの医師にとって重要です。これは新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間に顕在化しました[4, 5]。
ARFの患者を分類し、治療効果を評価するために、CO2レベルを監視することは不可欠です[8]。Bobbia氏らは、経皮CO2値(tcpCO2)は、ARFを伴う患者の動脈血値と良好な一致を示すことを報告しました[6]。
Horvath氏らは、EDでNIVを開始した急性呼吸不全患者の場合、ベースラインと治療後の両方で、tcpCO2が動脈血値と比較して正確であることを示しました[7]。彼らは、CO2の経皮モニタリングは「EDで緊急NIVを受けている重症低酸素血症性および/または高二酸化炭素血症性呼吸不全患者の頻回な血液ガス分析に代わる、信頼性が高く、実行可能で、患者にもやさしい、安全な代替手段である」と結論付けています[7]。
TCMを高度治療室/集中治療室でのNIVタイトレーションに活用
初期に安定した後、NIVを受けている患者は高度または集中治療室で治療を受けることがよくあります[1]。CO2のモニタリングは、多くの場合、動脈留置カテーテルまたは頻回な動脈穿刺によって行われます[3]。
van Oppen氏らは、RHDUでNIVを受けている患者を対象に、TCMと動脈血サンプルを頻回採取した場合の精度を比較、調査しました。その結果、彼らはTCMが「急性高二酸化炭素血症性呼吸不全でNIVを必要とする患者への、頻回な動脈血液ガス採血に代わる有望な代替手段である」と結論付けています[3]。
英国胸部疾患学会/集中治療学会は、NIVタイトレーションと使用停止をサポートする動脈血液ガス分析の補助として、CO2の経皮モニタリングを推奨しています[10]。
Ergan氏らによるレビュー記事では、ICUおよびRHDUにおける急性呼吸不全のNIV治療中に、CO2の経皮モニタリングが推奨されています。彼らは、TCMはNIV中の「予防的な換気タイトレーション」の促進に役立つと示唆しています[1]。
慢性呼吸不全および睡眠検査中のNIVとTCM
NIVはCOPD、神経筋障害、肥満性低換気症候群(OHS)、中枢性低換気症候群によって引き起こされる慢性呼吸不全の有効な治療法です[8, 9]。日中および夜間の動脈血のCO2は呼吸器系死亡率の予測因子ですが、動脈血値は常に利用できるわけではなく、また採血時に患者に痛みを与える可能性もあります[8, 9]。
Arrestad氏らは、慢性呼吸不全でNIVを受けている67名の患者において、tcpCO2を動脈血値と比較しました。その結果は、tcpCO2が、夜間のモニタリング後に臨床的に有意なドリフトを示さず、日中の動脈血値(バイアス 0.23 kPa、すべての値が+/-1 kPaの臨床的に許容できる範囲内で記録)と優れた一致を示しました[9]。
Storre氏らは、慢性呼吸不全でNIVを受けている患者において3種類のTCMを比較し、「夜間tcpCO2モニタリングは、慢性HRF(低酸素血症性呼吸不全)の睡眠中にNPPV(非侵襲的陽圧換気)を受けている患者において、肺胞換気を評価するための信頼性の高いツールになった」と結論付けました[11]。
AARC(米国呼吸ケア学会)は、「動脈アクセスがなかったり、最低限の採血でO2およびCO2の連続モニタリングを必要としている」患者に対して、診断および治療介入の評価を含む、経皮モニタリングの使用を推奨しています[12]。
TCMとCO2呼気終末モニタリングの比較
CO2の呼気終末モニタリング(EtCO2)は、換気状態をモニタリングし気管内チューブの位置を確認するために、一般的に手術室や挿管患者に使用されます。
Fujimoto氏らは、低酸素血症性呼吸不全の患者のTCMと呼気終末モニタリングを比較し、tcpCO2はより正確で、EtCO2よりもバイアスが小さいことを報告しています[13]。
同様に、Lermuzeaux氏らは、ICUの非挿管患者において、tcpCO2はEtCO2より正確だと述べています[15]。
患者に選ばれる経皮血液ガスモニタ
動脈血液ガス分析は、CO2を測定するためのゴールドスタンダードですが、留置カテーテルまたは動脈穿刺によってのみ値が得られます。両方とも合併症のリスクがあり、動脈穿刺は患者にとって痛みを伴う可能性があります[3]。
2つの研究は、経皮モニタリングと動脈ライン/穿刺を比較した疼痛スコアと患者の満足度を比較し、両者ともに、動脈血液ガス分析と比較してTCMの方が明らかに満足度が高く、疼痛スコアが低いことが判明しました[3, 14]。
まとめ
CO2の経皮モニタリングは、連続的な値を提供し、急性および慢性呼吸不全の動脈血液ガスと比較して良好な精度を示し、さらに非侵襲的であるため、患者からも圧倒的に支持されます。NIVでTCMを使用しタイトレーション設定を行うことで、先を見越した換気管理を行う機会が得られます。
参考文献
1. Ergan B, Nasiłowski J, Winck JC. How should we monitor patients with acute respiratory failure treated with noninvasive ventilation? European Respiratory Review 2018; 27, 148.
2. Franco C, Facciolongo N, Tonelli R, et al. Feasibility and clinical impact of out-of-ICU noninvasive respiratory support in patients with COVID-19-related pneumonia. Eur Respir J 2020; 56, 5.
3. van Oppen JD, Daniel PS, Sovani MP. What is the potential role of transcutaneous carbon dioxide in guiding acute noninvasive ventilation?
Respir Care 2015; 60, 4: 484–91.
4. Wilcox SR, Condella A. Emergency Department Management of Severe Hypoxemic Respiratory Failure in Adults With COVID-19. J Emerg Med 2020.
5. Nee PA, Al-Jubouri MA, Gray AJ, et al. Critical care in the emergency department: Acute respiratory failure. Emerg Med J 2011; 28, 2: 94–97.
6. Bobbia X, Claret P-G, Palmier L et al. Concordance and limits between transcutaneous and arterial carbon dioxide pressure in emergency department patients with acute respiratory failure: A single-center prospective observational study. Scand J Trauma Resusc Emerg Med 2015; 23: 40.
7. Horvath CM, Brutsche MH, Baty F, Rüdiger JJ. Transcutaneous versus blood carbon dioxide monitoring during acute noninvasive ventilation in the
emergency department - a retrospective analysis. Swiss Med Wkly 2016; 146: w14373.
8. Köhnlein T, Windisch W, Köhler D, et al. Non-invasive positive pressure ventilation for the treatment of severe stable chronic obstructive pulmonary disease: A prospective, multicentre, randomised, controlled clinical trial. Lancet Respir Med 2014; 2, 9: 698–705.
9. Aarrestad S, Tollefsen E, Kleiven AL, et al. Validity of transcutaneous PCO2in monitoring chronic hypoventilation treated with non-invasive ventilation. Respir Med 2016; 112: 112–18.
10. Davidson AC, Banham S, Elliott M, et al. BTS/ICS guideline for the ventilatory management of acute hypercapnic respiratory failure in adults.
Thorax 2016; 71 Suppl 2: ii1-35.
11. Storre JH, Magnet FS, Dreher M, Windisch W. Transcutaneous monitoring as a replacement for arterial PCO(2) monitoring during nocturnal noninvasive ventilation. Respir Med 2011; 105, 1: 143–50.
12. Restrepo RD, Hirst KR, Wittnebel L, Wettstein R. AARC clinical practice guideline: Transcutaneous monitoring of carbon dioxide and oxygen: 2012.
Respir Care 2012; 57, 11: 1955–62.
13. Fujimoto S, Suzuki M, Sakamoto K et al. Comparison of End-Tidal, Arterial, Venous, and Transcutaneous PCO2. Respir Care 2019; 64, 10: 1208–14.
14. Mummery V, Rogers E, Padmanaban V, et al. Transcutaneous carbon dioxide measurement is not a reliable alternative to arterial blood gas
sampling in the acute medical setting. Eur Respir J 2019; 53, 4.
15. Lermuzeaux M, Meric H, Sauneuf B, et al. Superiority of transcutaneous CO2 over end-tidal CO2 measurement for monitoring respiratory failure in nonintubated patients: A pilot study. J Crit Care 2016; 31, 1: 150–56.
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